むし歯菌は赤ちゃんにうつる?「スプーンの共用はダメ」は本当なのか|名駅・名古屋駅の歯医者・小児歯科「名駅サランおとなこども歯科」の医院ブログ

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むし歯菌は赤ちゃんにうつる?「スプーンの共用はダメ」は本当なのか

こんにちは。名駅サランおとなこども歯科 院長 妹尾です。

※この記事は一般的な情報の提供を目的としています。お子さん一人ひとりで状況は異なりますので、実際の予防や治療については必ず担当の歯科医師にご相談ください。

先に結論をお伝えします

「赤ちゃんとスプーンを分けないと、むし歯がうつってしまう」——子育て中の方なら、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。離乳食の時期に取り分け用のスプーンをもう一本用意したり、うっかり同じお箸を使ってしまって不安になったり。そんな経験をお持ちの方は少なくないと思います。

はじめに結論をお伝えします。食器を分けることだけで、むし歯を確実に予防できるとはいえません。食器の共用を避けることの予防効果を示す科学的な根拠は必ずしも強いものではなく、食習慣やフッ化物の利用、毎日の歯みがきを含めた対策のほうが大切だと考えられています。

そして、すでに共用していたからといって、お子さんのむし歯が決まってしまうわけでもありません。ただし「何も気にしなくていい」ということでもなく、力を入れる場所が別にある、というのが今日のお話です。

なぜ「食器を分けて」と言われてきたのか

むし歯に関わる細菌のひとつに、ミュータンスレンサ球菌(いわゆるミュータンス菌)があります。生まれた直後の赤ちゃんでは、この菌は通常ほとんど検出されません。成長の過程で、家族をはじめ周囲の人との日常的な接触を通じて、お口の中の細菌のバランス(口腔細菌叢)が少しずつ形づくられていきます。

そこから「大人の唾液が赤ちゃんの口に入らないようにすれば、むし歯を防げるのではないか」という考え方が広まりました。スプーンやお箸、コップを分ける、熱いものを吹き冷まして与えない——といったアドバイスは、この考えから生まれたものです。

長いあいだ育児書や健診の場で伝えられてきたので、「常識」として受け止めている方も多いと思います。実際に、当院でも「気をつけていたつもりだったのですが……」とご相談いただくことがあります。

2023年、専門の学会が見解を出しました

2023年8月31日、日本口腔衛生学会が「乳幼児期における親との食器共有について」という見解を公表しました。そこで示されたのは、食器の共有を避けることでむし歯を予防できるという科学的な根拠は、必ずしも強いものではないという内容です。

日本小児歯科学会も、食器やスプーンの共有が細菌の伝わる経路のひとつになる可能性は否定できないとしたうえで、食具を分けることだけに限らず、養育者自身がきちんと歯科健診を受け、むし歯や歯周病のないお口を保ちながら子育てをすることが大切だという考えを示しています。

つまり「食器の共用は無意味な心配」でもなければ、「分ければ安心」でもありません。過度に恐れる必要はないけれど、それだけが決め手にもならない——これがいちばん誤解の少ない受け止め方だと思います。

食器を分けるだけでは足りない理由

理由1:唾液に触れる機会は食事だけではありません
食器以外にも、日常のスキンシップや生活のなかで唾液に接触する機会はあります。食器の共用だけを完全に避けても、お口の細菌との接触をゼロにすることは現実的ではありません。

理由2:むし歯は一種類の菌だけで決まる病気ではありません
むし歯は、お口の中の細菌全体のバランス、糖類をとる頻度、歯垢の蓄積、フッ化物の利用、歯が生えてからの時間などが影響し合い、細菌がつくる酸によって歯が溶けること(脱灰)で進んでいきます。「ミュータンス菌がうつったか、うつらなかったか」の二択で決まるものではありません。

理由3:菌がいてもむし歯になるとは限りません
お口に細菌がいることと、実際に歯が溶けることは別の話です。条件がいくつも重なってはじめて、むし歯は進みます。

そして何より、食器を分けることに気を取られて食事の時間が負担になってしまうとしたら、本来の目的から離れてしまいます。

本当に力を入れたい3つのこと

1.砂糖を含む飲食物は「量」も「回数」も大切に
砂糖は量も回数も大切ですが、とくに少量でも何度も口にする「だらだら食べ・だらだら飲み」は、歯が酸にさらされる時間を長くしやすくなります。甘い飲み物やおやつは時間を決め、食後は水やお茶にする習慣をつけましょう。

なお、歯が生える前にむし歯は起こりません。歯が生えはじめたら予防を始める、という理解で十分です。夜間の授乳や寝かしつけの哺乳についても、母乳そのものを一律に避ける必要はありません。歯が生えたあとの時期か、頻度はどうか、清掃が追いついているか、ほかに甘い飲み物の習慣がないか——そうした点を合わせて見ていく必要がありますので、気になる方は個別にご相談ください。

2.仕上げみがきとフッ化物配合歯磨剤
歯が生えたら、年齢に合った量・濃度のフッ化物配合歯磨剤を使い、保護者の方が仕上げみがきをしてあげましょう。フッ化物は、むし歯の始まりの段階で歯の再石灰化(溶けかけた部分の修復)を助け、むし歯の発生や進行を防ぐのに役立ちます。

仕上げみがきは、少なくとも就学前ごろまでは保護者の方が確認・補助してあげたい習慣です。ただし、お子さんの手先の器用さやむし歯のなりやすさ、ご家庭の状況によっても変わりますので、やめどきは診察のときにご相談ください。使う量や濃度も年齢で変わりますので、迷ったら遠慮なくお尋ねください。

3.保護者の方ご自身のお口を整える
ここは見落とされがちですが、大切な点です。保護者の方がむし歯や歯周病を治療・管理し、良好なお口の環境を保つことは、ご家族全体のお口の健康につながります。日本小児歯科学会も、食具を分けることだけでなく、養育者自身の定期健診と口腔健康管理を大切な要素として挙げています。

妊娠中や子育て中はご自身のことが後回しになりやすいのですが、保護者の方が定期的に受診することは、そのままお子さんの予防につながっていきます。

「もう共用してしまった」という方へ

ここまで読んで、「うちはもう普通に同じスプーンを使っていた」と気になった方もいらっしゃるかもしれません。どうかご安心ください。

お口に細菌がいることと、むし歯になることはイコールではありません。これからの食習慣と歯みがき、そして定期的なチェックで、できることはたくさんあります。過ぎたことを悔やむ必要はありませんので、今日からできることに目を向けていただければと思います。

定期受診を始める時期は、歯が生えはじめたころ、遅くとも1歳ごろまでを目安にご相談いただくとよいでしょう。

まとめ

・食器を分けることだけで、むし歯を確実に予防できるとはいえません
・2023年8月、日本口腔衛生学会がその科学的根拠は強くないという見解を公表しています
・一方で伝わる経路のひとつである可能性は否定できず、「過度に恐れる必要はないが、決め手でもない」が実際のところです
・大切なのは「砂糖を含む飲食物のとり方」「仕上げみがきとフッ化物」「保護者ご自身のお口の健康」の3つです
・すでに共用していても、これからの習慣で十分に対応できます

子育ては、気をつけることが多くて大変です。だからこそ、効果のはっきりしていることに絞って、無理なく続けていただきたいと思っています。

名駅サランおとなこども歯科からのメッセージ

当院は名古屋駅1番出口から徒歩1分、お仕事や買い物の合間にも立ち寄っていただける場所にあります。保育士による無料の託児とキッズスペースをご用意していますので、「小さい子がいて自分の治療に行けない」という保護者の方も、安心して診療を受けていただけます。

お子さんの歯みがきの仕方、フッ化物配合歯磨剤の使い方、おやつの選び方、授乳や卒乳のことなど、小さなご相談も歓迎です。日曜日の診療も行っており、急なお痛みにも対応しています。ご家族そろってお口の健康を守っていきましょう。

名駅サランおとなこども歯科 院長 妹尾

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