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その中断が命取り!痛みが消えても根管治療を途中で止めると「抜歯」一直線になる理由
「あんなに痛かった歯の痛みが嘘のようになくなった。もう治療に行かなくても大丈夫なんじゃないか?」
根管治療(歯の神経の治療)を受けている最中、ふとそんな風に思うことはありませんか? 仕事が忙しい、通院が面倒、治療が苦手……様々な理由で、痛みが引いたタイミングで足が遠のいてしまう患者様は少なくありません。
しかし、歯科医師の立場から結論を申し上げます。 「根管治療を途中で中断することは、極めて危険な行為です」
痛みがなくなったことは、決して「治った」ことを意味しません。むしろ、治療途中の無防備な歯を放置することは、細菌たちに絶好の繁殖場所を提供しているのと同じことなのです。最悪の場合、本来なら残せたはずの歯を失い、抜歯に至るケースも珍しくありません。
本記事では、なぜ根管治療の中断がそれほどまでに危険なのか、放置した歯の内部で一体何が起こるのか、そして大切な歯を守るために知っておいていただきたい真実を、詳しく解説していきます。
■ そもそも「根管治療」とはどんな治療?なぜ時間がかかるの?
根管治療(こんかんちりょう)とは、重度の虫歯や外傷などによって、歯の内部にある神経(歯髄)が細菌感染を起こしたり、壊死してしまったりした際に行う治療です。一般的には「歯の神経を抜く治療」「根っこの治療」とも呼ばれます。
建物に例えるなら、歯は「家」、根管は家の土台となる「基礎」にあたります。基礎が腐っていたら、どんなに立派な家を建ててもすぐに傾いてしまいますよね。根管治療は、まさにこの「歯の基礎工事」を行う、非常に繊細で重要な治療なのです。
治療の基本的なステップ
根管治療は、以下の手順で慎重に進められます。
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感染源の除去: 虫歯部分を削り、感染してしまった神経や血管、汚染された歯質を専用の器具で丁寧に取り除きます。
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根管の清掃・消毒: 神経が入っていた管(根管)は非常に細く、複雑に曲がりくねっています。この内部をやすりのような器具で拡大・清掃し、薬剤を使って徹底的に洗浄・消毒を繰り返します。ここが最も時間がかかり、かつ重要な工程です。
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薬剤の充填(根管充填): 根管内が無菌状態に近づいたら、細菌が再び侵入しないように、ガッタパーチャと呼ばれるゴムのような防腐剤を隙間なく緊密に詰めます。
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土台と被せ物の装着: 最後に、歯の土台を作り、その上に被せ物(クラウン)を装着して歯の機能を回復させます。
根管の形は人それぞれ異なり、非常に複雑です。目に見えないミクロン単位の細菌を相手にするため、一度や二度の通院では完了せず、複数回の通院が必要になるのです。
■ 中断が危険な理由:治療途中の歯は「細菌の温床」になる!
では、この繊細な治療を途中で止めてしまうと、何が問題なのでしょうか? それは、治療途中の歯が細菌に対して完全に無防備な状態に置かれるからです。
● 「仮の蓋」は長持ちしません
治療期間中、歯の穴には次の治療までの間、「仮封(かふう)」と呼ばれる仮の蓋や薬を詰めています。これはあくまで一時的なものであり、完全に密閉されているわけではありません。
この「仮の蓋」は、日々の食事や歯磨き、噛み合わせの力によって、容易にすり減ったり、欠けたり、外れたりします。蓋にわずかでも隙間ができれば、お口の中に無数に存在する細菌や、唾液などが歯の内部へ容易に侵入します。
● 細菌のパラダイスと化す歯の内部
治療を中断した歯の内部は、神経がなく免疫力が働かないため、細菌にとっては暖かくて栄養豊富な、まさに「パラダイス」です。 一度きれいにしたはずの根管内で細菌が爆発的に増殖し、以前よりも感染状態が悪化してしまいます。これを「再感染」と呼びます。一度再感染を起こすと、治療はさらに難航し、成功率は著しく低下します。
● 「痛くない」は「治った」ではありません
最も恐ろしいのは、「感染が進行していても痛みが出ないことがある」という点です。 神経を取ってしまった歯は、初期の段階では痛みを感じません。患者様が「痛くないから大丈夫」と油断している間にも、水面下で細菌は歯の深部へと侵攻し、根の周囲の組織を破壊し続けているのです。
■ 放置するとどうなる?待ち受ける「抜歯」へのシナリオ
治療を中断し、細菌の侵入を許したまま放置すると、事態は深刻化していきます。最終的に抜歯に至るまでの典型的な流れを見てみましょう。
危険レベル1:根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)の悪化
増殖した細菌が歯の根の先端(根尖)から外に出て、顎の骨の中にまで感染が広がります。根の先に膿の袋ができ、以下のような症状が現れます。
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体調が悪い時に歯茎が腫れる、浮いた感じがする。
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噛むと違和感や鈍い痛みがある。
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歯茎に「フィステル」と呼ばれる小さなおできができ、そこから膿が出る。
この段階では慢性的な症状が多く、痛みが強い時と弱い時を繰り返すため、まだ様子を見てしまう方もいます。しかし、レントゲンを撮ると根の先に黒い影が写り、顎の骨が溶かされ始めていることが確認できます。
危険レベル2:急性発作と激痛
慢性的に経過していた炎症が、体調不良やストレスなどをきっかけに急激に悪化することがあります(急性化)。
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眠れないほどの激しい痛み。
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頬や顎までパンパンに腫れ上がる。
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発熱やリンパ節の腫れを伴う。
ここまで来ると、日常生活に支障をきたすレベルとなり、慌てて歯科医院に駆け込むことになります。
危険レベル3:歯の動揺と破折、そして抜歯へ
感染が広がり、歯を支えている周囲の骨(歯槽骨)が大きく溶けてしまうと、歯は支えを失ってグラグラと動揺し始めます。 また、神経を失って脆くなった歯は、噛む力に耐えきれず、根っこにヒビが入ったり、割れてしまったりする「歯根破折(しこんはせつ)」のリスクも高まります。
骨が広範囲に溶けてしまった場合や、歯根破折が起きてしまった場合は、もはやどのような名医であっても歯を残すことは不可能です。最終手段として**「抜歯」**を選択せざるを得なくなります。
■ 歯を失うことの代償は大きい
「たかが一本、歯が抜けただけ」と軽く考えてはいけません。歯を失うことは、あなたの生活の質(QOL)を大きく低下させます。
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食事が美味しくない: しっかり噛めなくなり、好きなものが食べられなくなるストレスは想像以上です。消化器官への負担も増えます。
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見た目の悪化: 前歯であれば審美性が損なわれますし、奥歯であっても歯並び全体が崩れ、顔の輪郭が変わってしまうこともあります。
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高額な治療費: 失った歯を補うためには、入れ歯、ブリッジ、インプラントなどの治療が必要です。特にインプラントは保険が効かず、高額な費用がかかります。
■ まとめ:未来の自分のために、治療は最後までやり遂げましょう
根管治療は、回数がかかり、口を開けているのも辛い、地味で大変な治療です。途中で通うのが億劫になってしまうお気持ちは痛いほどよく分かります。
しかし、根管治療の中断は、「現状維持」ではありません。「抜歯に向かって確実に進んでいる危険な状態」なのです。
歯は、一度失ってしまえば二度と元には戻りません。ご自身の生まれ持った歯に勝るものはないのです。
歯を守るための鉄則
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痛みが消えても自己判断しない: 歯科医師が「治療完了」と言うまで、絶対に自己判断で通院を止めないでください。
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予約を守る: 仮の蓋の限界を理解し、指定された期間内に必ず次の治療を受けてください。間隔が空きすぎると再感染のリスクが高まります。
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不安は相談する: 「あと何回かかるの?」「今日は何をしたの?」など、治療に関する疑問や不安、通院が難しい事情があれば、遠慮なく歯科医師やスタッフに相談してください。
今、少しの我慢と努力で治療を最後までやり遂げることが、将来のご自身の健康と笑顔を守るための最も賢明な投資となります。一緒に頑張りましょう。
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